フィリピンの友人との往復書簡 2007年4月24日 親愛なるアンジル・ゴンザレスさん 状況はどうですか。万事うまくいっていることを希望します。 私の健康状態は私が動きまわることを許していません。私が決めたのは、私自身、妻、そして娘を動員して、判決文とそのほかに必要な文書情報を200部以上コピーし、それに私の手紙を添えて、日本その他の国々の「憂慮する」影響力のある人たち(政治家、作家、ジャーナリスト、活動家等)に送ることでした。フィリピン社会の民衆への関心を促すためです。 正義と解放を求めるあなた方フィリピンの民衆のたたかいに、私が最後のささやかな貢献ができたことをさいわいに思います。 私の健康状態はすでに最悪の状態にきてます。医者は私が末期のガン(胃ガンです――PPTの裁判のとき、私が食べられなかったことをおぼえておられるでしょう)――末期で、手のほどこしようがないと診断しています。 私の余命は限られています――おそらく3カ月、あるいは6カ月かもしれません。私はこの運命を静かに受け入れ、少なくとも書くことで、作家としての最善を尽くすつもりです。 ハーグにいたとき、あなた方フィリピンの人たちと過ごした時間は楽しかった。本当によい思い出です。ありがとう。 愛と尊敬をこめて (署名) ODA Makoto 2007年4月27日 最も親愛なる小田実さん この上なく熱い挨拶を送ります! 社会正義・自由・民主主義を求めるフィリピン民衆のたたかいを支援するために、私たちと日本の民衆の連帯を促進するために、あなたがなさったことすべてに私たちは心から感謝と賞賛のことばを述べたいと思います。 とくに私たちは、去る3月21日から25日まで、ハーグで開かれた恒久民族民衆法廷のフィリピンにかかわる第二回法廷に、審判員としてあなたがきわめて貴重な参加をされたことに感謝します。あなたはかつてPPTのフィリピンにかかわる第一回法廷で審判員をつとめられ、今回の第二回法廷にも参加されました。あなたの存在は大きな貢献でした。あなたがおられることで、陪審員はフィリピンを理解し、それによって告訴者たちが提出した証拠にもとづく正しい判決ができたのです。さらに、尊敬される社会活動家としてのあなたの実績ある活動は、恒久民族民衆法廷の信頼性と威信を高めました。 私たちは、危機的状況にあるフィリピンの人権問題の認識についてあなたが表明された憂慮と懸念、日本のメディアは新聞もテレビもこの問題についてひとつも伝えていないという発言を思い出します。私たちは、あなたが日本に帰られてすぐに、フィリピンの状況にたいする同国人である日本人の注意を促すために、なみなみならない努力をされ、私たちの民衆の闘い――とりわけ、主権を守り、市民的・社会的・経済的・文化的権利を維持するための闘い――との連帯を推進するために、行動を起こされたことを知りました。 私たちはいま深く悲しんでいます。この2カ月間、PPTがフィリピン問題で開廷しているあいだとその後に、あなたが耐え忍ばれた過酷な緊張もあったからか、あなたの健康が悪化しているというお知らせをうけたからです。私たちはあなたの特別の健康状態をまえもって知らなかったことを悔やんでいます。まえもって知っていれば、よしんば避けられないストレスと苦痛を取り除くことができないとしても、それらを軽減するために、必要な処置をもっととることができたかもしれなかったからです。しかし私たちは、ご自分の健康状態を告げれば、私たちに不必要な重荷を負わせるだけだと、あなたがお考えになったのだということを十分に理解しており、賞賛の念を禁じ得ません。 小田さん、あなたはご自分の身体的健康状態をかえりみることなく、私たちフィリピン民衆と連帯するために素晴らしい企てをしてくださいました。私たちはそのすべてにたいして敬意をこめた挨拶を送ります。私たちは、過酷な旅と活動があなたの状態を悪化させるのではないかと心配した医師、家族、友人の助言に逆らって、あなたが民族民衆法廷への参加を決められたということをほんの最近になって知りました。実際、心配の通りになりました。しかし、帰国後のあなたは当然必要な休養をとるのではなく、むしろ、審判員としてのあなたの責任と職務をはるかに超えた連帯のための活動をつづけられました。真の国際主義者として、また、社会活動家として。 小田さん、私たちがあなたのことから思い起こすのはノーマン・ベチューンです。彼は中国の民衆と連帯して、中国の戦線で無私で疲れを知らない活動をしたカナダ人医師ですが、彼と同じようにあなたも、個人の楽しみと利益をあとまわしにして、自国民だけでなく世界の民衆にとっても重要な自由・正義・民主主義を優先し、私たちに国際主義者の義務を思い起こさせ、励ましておられます。 私たちは強く強くあなたのご回復とご健康を願っています。 フィリピンにかかわる恒久民族民衆法廷の裁判を提起し組織した団体と個人を代表して。 (署名) レイ・クラロ・C・カサンブル フィリピン・ピース・センター 所長、フィリピン・コーディネーティング事務局 (署名) アンジェリカ・M・ゴンザレス フィリピン・ピース・センター 事務局長、国際コーディネーティング事務局 裁判提起諸団体: ウスティスヤ!(正義のために団結したアロヨ体制被害者) SELDA(勾留からの解放と赦免を求める元勾留者団体) 正義を求める行方不明者家族会 BAYAN(新愛国同盟) 世界教会司教フォーラム フィリピン統一キリスト教会 ピース・フォー・ライフ 公共利益のための法センター フィリピン・ピース・センター カラパタン(民衆の権利推進同盟) Ibon財団 (金井和子訳) << TOP PAGE |